はじめに
新型コロナの感染拡大は私達の日常の生活から労働形態、事業形態の在り方を大きく変えてしまいました。日頃トルコとのビジネスに従事されている皆様、また今後トルコと新たな業務をスタートをされようとする日本企業の皆様にとって、一つの指標となるトルコお役立ち情報を発信してまいります。

読者の皆様には、トルコの各業界の置かれた事業環境の違いや来年以降の見通しを日本語で正確に掴んでいただくことを目的とし、Ekonomist紙などを情報ソースとします。コロナ禍の中、トルコの各主要セクターは比較的早く回復を遂げつつあるものの、回復に至る過程や今後の業績見通しには大きな「幅」も見て取れます。EUを基軸に、世界各地の新興国に多角的に進出しようとするトルコ企業の事業戦略を読者に理解して頂き、日本企業の対トルコ戦略に資するものとなれば幸いです。

日本語への翻訳はトルコ語経済記事翻訳者の石井宏樹氏に担当いただきます。


現代トルコ・ビジネス報「2020年期トルコ主要セクターの業績見通し」


石井宏樹/トルコ語経済記事翻訳者


2020年1-8月期においてトルコ企業はコロナ禍により大きな事業活動の制約を受けた。最初の感染者は3月に報告されたが、感染者が急増した4-5月期に各企業に業績低迷が広がった。主要取引先であるEUでロックダウン(都市封鎖)も各セクターの輸出低迷に拍車をかけた。世界的な傾向に沿う形で、第三四半期(7-9月)にかけて回復基調になった企業が多かったものの、セクター毎に回復の様相や今後の見通しは異なっている。以下、各主要セクターの状況を日本語で紹介していきたい。

なお、この文章はEkonomist紙特集記事「海外輸出を目指せ(İHRACATIN ROTASI)」(2020年10月4日版、Aram Ekin Duran記者)に全面的に依っており、同記事を抜粋・要約した上で作成したものであることを予めご了承頂きたい。


〈自動車セクター〉
自動車セクターはトルコ・ビジネス界における最重要セクターである。同セクターの2020年の輸出目標は320億ドルから250億ドルにまで下方修正された。労働集約型の産業であることから、「密」状況を避けられず、完全な形での事業再開には二の足を踏んでいる状況だ。この8か月間のセクター全体の輸出減は27.2%に上る。特に、最大市場であるEU向けはこの8か月間で30%の輸出が減少し、我が国の自動車輸出における対EUの輸出割合は74%にまで低下した。一方で明るい見通しもある。新興国向け輸出の伸びは堅調だ。エジプト向け37%、メキシコ向け19%、ブラジル向け26%、UAE向け36%の輸出増を達成している。2020年期業績は最終四半期(10-12月)に掛かっている。 〔自動車輸出協会(OİB)会長Baran Çelik氏談〕

〈機械セクター〉
機械セクターは約200億ドルの輸出を行う有力セクターである。4-5月期において40%を超える損失が発生したが、夏には受注が再開し、9月には月間受注が10%に到達した。同セクターの主要取引国は欧米(独、米、英、伊、仏)であるが、これらの国向けでさえ11%から20%の輸出減少が見られた。同セクターが特に注目しているのはロシア市場である。長期間に渡る両国間の関係強化と、大型投資を行ってきたことが功を奏した。コロナの状況下においても18.6%の輸出の伸び率を記録している。 〔機械輸出者組合(Makine İhracatçıları Birliği)会長Kutlu Karavelioğlu氏談〕

〈鉄鋼セクター〉
最も重要なセクターの一つである鉄鋼セクターも前半期(1-6月)は輸出量の減少に苦しんだ。この間の輸出量は前年同期比で9.8%減少し、970万トンに留まった。(金額ベース16.6%減し、期内売上高59億ドル)しかし、コロナ禍前からの期初目標は生きており、大きく修正はしない。期末目標は昨年同様2,120万トンの出荷、5%減の売上132億ドルの達成だ。製鉄セクターにとっても最も損失が大きかったのは欧州市場であった。EUで感染防止行動が広がり、トルコからの輸入そのものが難しくなった。同セクターは受注ベースで見れば生産も輸出活動も継続しており、注文も2, 3か月前より増えている。2021年期はグローバル規模で以前のビジネス環境に戻り、輸出高10%増2,330万トンの出荷を目指す。目標売上高は15%増の151億ドルだ。〔鉄鋼輸出連盟(ÇİB)会長Adnan Aslan氏談〕

〈化学セクター〉
  化学セクターもコロナによる傷を癒そうと必死だ。損失を取り返すためにターゲットとなるのはEU市場であるが、欧州でのコロナ再流行の動向がネックだ。同セクターは前年1-8月の昨年同時期比で20億ドルの損失を計上している。この間の総売上高は115億ドルだ。この後退によって最も大きな損失を蒙っているのは、鉱物資源(燃料・油)セクターだ。主因はエネルギー需要の減少である。販売国トップ10はオランダ、イラク、ドイツ、アメリカ合衆国、イタリア、英国、スペイン、イスラエル、ルーマニア、ベルギーであるが、輸出実績が増えている国もあれば減っている国もある。最終四半期に欧州で再び感染者が増加すれば、需給の波が発生し同セクターも影響を免れえない。 〔イスタンブール化学製品輸出組合(İKMİB)会長のAdil Pelister氏〕

〈家具・林業セクター〉
家具・林業セクターの2019年期輸出実績は50億ドルである。1-8月期の輸出は12.4%減少した。同セクターはフォーラム開催が商談の中心であったが、コロナ禍による延期が販売額低迷に直結した。同セクターからの輸出高の32%を占めるイラク市場についても16%の下落が見られた。対サウジアラビアやリビア向けだけでなく、流行初期に深手を負ったイタリア市場での40%近い売上減も痛手であった。輸出実績においてはダブルパンチを受けている状況だ。米中貿易戦争で中国からの対米輸出が滞っていることから、米国市場への進出に取り組んでいる。 〔地中海家具・製紙・林業製品輸出者組合(Akdeniz Mobilya Kağıt ve Orman Ürünleri İhracatçıları Birliği, AKAMİB) Onur Kılıçer氏談〕

(以上)